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ツバキ [樹木]

ツバキ

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 ツバキはサザンカより世界的に知られています。分類では両者は同じ属ですが、種が異なります。よく目にするツバキはヤブツバキです。椿の名所としてよく知られているのは伊豆大島(東京都)ですが、暖地性のため暖かいところに多く見られます。しかし、北限は青森県であり、日本一であろうヤブツバキは老谷(富山県)にあります。このツバキは樹齢500年であり、幹周り3.47mの巨木で、樹勢盛んです。

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上の写真:右側の樹が大きく(樹高6.6m)、富山県指定文化財(天然記念物)になっています。下の写真は木の背面は枝で覆われて薄暗く、東西8m、南北11mの枝張りは立派です。

 さて、山茶(ツバキ)の成分に関する研究は、サザンカ(茶梅)の研究に登場した青山新次郎によって詳細に行われました。下記の薬学雑誌にドイツ語と日本語で書かれていますが、この研究はドイツの化学者であるWedekindの目に止まりました。書簡によって、青山の取り出したツバキサポニンのアグリコン部(糖を含まない部分)は、Agrostemma githago(麦仙翁、なでしこ科の植物)に含まれている非糖質のGithageninではないかと注意がありました。これを受け、青山はWedekindと同じ条件で、ツバキサポニンを酸化して酸化物の物性を調べました。しかし、ツバキサポニンのアグリコンはGithageninでないと結論に至りました。昭和初めの日本の化学者が当時化学の先進国であったドイツの化学者と対等に化学議論をしたことに、活躍の程が分かります。今のようなアメリカの化学が石油を基本としたものですが、石炭を基本とするドイツの化学が日本の科学の原点になる例を見たようです。

【文献1】 青山新次郎、薬学雑誌51, 430-434 (1931).

 一方、ツバキの油成分で一番多いのはオレイン酸です。この油はオリーブ油より3,4割多くオレイン酸を含んでいます。しかし、大量には取れないため食料としての利用は広まっていません。ツバキ油の化粧品としての利用は古くから盛んですが、上記のサポニン以外に、タンニン(サザンカと重複、下の文献2)、インドール(これは着生菌によるものとされ、植物本来のものではない。また、アントラキノン系色素も得られている。文献3)など含まれていると報じられています。

【文献2】 T. Yoshida, Y. Chou, Y. Maruyama, T. Okuda, Chem. Pharm. Bull., 38, 2681-2686 (1990).

【文献3】 糸川秀治、秋田安男、山崎幹夫、薬学雑誌93, 1251-1252 (1973).; 同雑誌、91, 505-507 (1971).

 天然に存在する化合物はなかなか純粋にして使うことはありませんが、抽出物をそのまま使うことはよくあります。ツバキの抽出物はお茶とよく似た生理活性を示すと期待され、多くの研究がされています。原文が得られたものを見てみましょう。

【文献3】 T. Taguri, T. Tanaka, I. Kouno, Biol. Pharm. Bull., 29, 2226-2235 (2006). において、
ツバキの抽出物にはカテキン、エラグタンニン、ガロタンニンなどのポリフェノールが含まれ、抗菌活性 (平均 MIC±S.D., μg/ml) ヤブツバキの場合 (783±485)を示すことを明らかにされました。ここで、MICとは活性を示す最低濃度を意味し、数値が低いほど少ない濃度で活性を示すことになり、強い活性を示すことになります。この場合、誤差(SD)は大きいですが、緑茶の492と比較して、そこそこの値を示しました。すなわち、ツバキは抗菌活性をある程度持つことを示すことが言えます。調べてみるとツバキ茶というのがあります。これは満更理由のないことではありません。

【文献4】 K. Onodera, K. Hanashiro, T. Yasumoto, Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1995-1998 (2006). において、
ケルセチン配糖体が強い抗酸化性を示すことを明らかにしました。その活性はEC50で示されますが、薬物や抗体などが最低値からの最大反応の50%を示す濃度を表し、数字が小さいほど少しの量で生理活性を示す一般的な効果濃度を意味します。ツバキの葉から取り出されたカメリアノシド(EC50=25.8 μM)はよく知られているアスコルビン酸(EC50=50.7 μM)より抗酸化活性が強いことを示しました。なお、類似の化合物に、ルチン(蕎麦に含まれる)やケルセチン(ドクダミに含まれる)がありますが、いずれもカメリアノシドと近い値を示します。

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【文献5】 M. Yoshikawa, T. Morikawa, Y. Asao, E. Fujiwara, S. Nakamura, H. Matsuda, Chem. Pharm Bull., 55, 606-612 (2007). において、
ツバキの花の抽出物には配糖体であるCamelliosidesを含み、マウスを使った実験であるが、胃粘膜の障害を抑える役割を持つことを明らかにしました。
つまり、ツバキは油だけでなく、葉や花のところも、生理作用があることが明らかにされました。

 これからの季節に悩まされるのは花粉のアレルギーです。アレルギーはアレルギーを起こす物質すなわちアレルゲン(抗原)と抗体との反応で開始されます。複雑なリン酸化酵素のカスケード(階段式連鎖)の後、肥満細胞顆粒化やサイトカイン生成などを経て症状、例えばヒスタミンの生成で痒さを示すこと、が現れます。Leeらはツバキの葉の抽出物が、顆粒化やサイトカイン生成を抑制すると報じています。作用機序では、Srcの仲間(カスケード初期の伝達蛋白質)であるリン酸化酵素を阻害する事によって、抗アレルギーを示すことを明らかにしました。この論文では、どのようなツバキ成分がこのような効果を示すかは明らかでありません。扱われたツバキ葉抽出物という混合物の場合、化合物間の相乗効果が働く場合があり、機構的には複雑になりそうです。しかし、結果的に効果があれば、著者らも述べているように、アレルギー症状を抑制すると言う意味で期待できます。
【文献6】 J-H. Lee, J-W. Kim, N-Y. Ko, S-H. Mun, D-K. Kim, J-D. Kim, H-S. Kimw, K-R. Leez, Y-K. Kim, M. Radingerz, E. Her, W-S. Choi, Clin. Exp. Allergy, 38, 794-804 (2008).

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Love Memories

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by Love Memories (2012-05-06 23:43) 

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