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蓼と生体 [観察]

蓼の不思議

090612「庭の蓼を見てご覧」といわれて、見ると一緒に植えてある青紫蘇の葉が青虫に食われているものと食われていないものがあった。
蓼は5年前に休耕田のところにあったものを許可を得て戴いた。この休耕田は南に小高い山があり北側が開けている場所であった。「来年は耕すから、今ならいいよ」と言われた。日差しの関係で植物が育ちやすいものと育ち難いものがある。この場所は蓼にとって絶好の生育場所となっている。持って帰ってベランダのプランターで適当に散水する程度だが、二、三年で、プランターが一杯になるほどになった。今年は庭において青紫蘇と一緒に植えてある。
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青紫蘇と蓼の共生は面白いかもしれない。しかし、青紫蘇を食する青虫は蓼を食べないようである。蓼とは少し離れたところの青紫蘇はかなり食されていた。よく見てみると、一緒に植わっているところでも、青紫蘇が背が高くなるとその葉が食われている。蓼に含まれる辛味成分が青虫の摂食作用を阻害すると言う説明でなんとなく納得してきたが、青虫は蓼であろうが青紫蘇であろうが片っ端から齧っている訳ではない。青虫がもっと感度の高い検知器をもっているか、蓼が別の警告物質を放っているか疑問が出てくるが分からない。また、報告を見つけることができなかった。
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日本にある蓼の種類は100近くあるが、アカマンマや蕎麦は辛味はないが蓼の一種である。ヤナギタデはホンタデとかマタデといわれ鮎料理に蓼酢として使われてきている。これは川魚のもつ寄生虫による害を防ぎ、殺菌作用を示す蓼の効用を利用したものと知られている。院内感染で問題となったMRSAに対して、抗菌作用を示すことが報告されている。このような作用を示す主成分はポリゴジアールである。構造式に示されるように、2つのアルデヒド基を持つセスキテルペンである。同じような構造を持つWarburganalも強い抗菌作用を示す。
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ポリゴジアールとEDTAの組み合わせは面白い抗カビ作用を示す。高濃度で作用するEDTAはポリゴジアールを添加することによって、10倍以上に上げる事ができる。いわゆる相乗効果は少ない薬を用いて副作用を回避しながら同等以上の薬効を得る、副作用回避の戦略の一つとなっている。ポリゴジアールは細胞の表面に穴を開けEDTAが細胞内に入り込むのを手助けする機構が考えられている。

ニュージーランドではHoropitoという蓼があり、ヤナギタデより多いポリゴジアールをもつ。ポリゴジアールの抗カビ作用はCandidaにも効く。カンディダは肺の中へ入ると抗カビ作用を示す薬は少なく死にいたる確率がエイズ患者には多い。このことに目を付けたKolorex社はポリゴジアールを商売としている。

殺菌作用や抗カビ作用を示すポリゴジアールであるが、良いことばかりではない。ポリゴジアールは溶血作用を示すために注射薬には使えない。
また、最近の報告によると、ポリゴジアールは神経細胞のグルタミン酸受容を阻害すると同時に細胞内のグルタミン酸を放出するという。このようなことはカプサイシンで見られるものと同じであり、臨床的な使用に警告している。
Neuropharmacology 46 (2004) 590–597.

また、辛味の常習性によって細胞の反応が遅くなる実験結果もある。これは辛味の刺激性(炎症)があれば対応する反応であるのでポリゴジアールに特異性がない。確かに刺激に対するトレランス(慣れ)が働くところに別の蛋白質が関与することもある。化合物の特殊性と一般性・共通性にまだ何か別の因子があるように思えるが、調べた範囲では研究を見つけることができなかった。分かっていることでありながら一歩踏み込むと何も分かっていないことや全然別のことを考えたほうがよい場合もある。神経細胞というのは不思議なものです。

ただ、内藤記念くすり博物館にこんなものがあった。健康によいからと言って、大量に摂取したり、常用したりすることに警鐘を鳴らしている文がある。貝原益軒の養生訓がある。何でも安易に薬に頼りたがる風潮に出くわす機会がたまたま多い。所詮、自己治癒を補助する薬の利用を考えていた江戸の人は何か違う。医療の発達した現代とは異なり、不思議なことである。
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【追記】 あの辛い蓼を汁にしたタデ汁を一度食したく思っている。もう6年前に三河湾にある佐久島からタデ汁をNHKが紹介したという030810。日本テレビのズームイン朝で川満聡さんによってその紹介があった030913。そのときには地元のおばあさんが出てきて、タデを擂って白いご飯にかけ水か湯かをかけて食べる素朴なものだった。島ではこのおばあさん一人が家でタデを栽培していると報道されていた。最近は島おこしで魚の汁が入ったものを500円で売られているらしい。これはこれで美味しそうである。山葵、辛子、唐辛子などとは違った辛さは風味という文化を感じる。昔の人がどのような理由で食材を使っていたのか考えるだけでも楽しい。それがグルメとかグルモンといわれようが。 さて、藍染の藍もタデ科の植物であるが、これについてはまた別の機会に書こう。これまで。
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